過去問解説 残り3項目 過去問2016年度 第35問
皆さん、こんにちは。
今回は、前回までに(1)(4)を解説しましたが、残りの3項目に関する話をしていきます。
問題は下記の通りです。
内分泌疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)クッシング症候群では、テタニーを起こす。
(2)原発性アルドステロン症では、高カリウム血症を起こす。
(3)褐色細胞腫では、高血圧を起こす。
(4)甲状腺機能低下症では、眼球突出を起こす。
(5)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)では、高ナトリウム血症を起こす。
(2)の原発性アルドステロン症ですが、それはどんな症状なのか?
副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイドホルモンのひとつで、アルドステロンの分泌が過剰になるために起こる病気です。
アルドステロンは腎臓に作用し、体のなかにナトリウムと水分を蓄えるために高血圧になります。
また、尿のなかにカリウムを排泄する作用をもつため、このホルモンが過剰になると血液中のカリウムが減り、筋力が低下したりします。
もともとまれな病気と思われていましたが、検査法の進歩に伴い、高血圧症の患者さんの5〜10%がこの疾患といわれています。
あわせて、高カリウム・低カリウム血症についても、記載しておきます。
・高カリウム血症
何らかの原因により血中のカリウムの濃度があがってしまう電解質代謝異常症のひとつです。災害時、挫滅症候群(クラッシュシンドローム)として発症する場合もあります。
・低カリウム血症
原発性アルドステロン症の全例に認められる症状ではありませんが、筋力の低下による四肢の脱力や易疲労感(疲れやすい)などの症状を引き起こします。
原発性アルドステロン症の特徴は、「高血圧」と「低カリウム血症」になるので、この問題は誤りという事を導けます。
(5)の抗利尿ホルモン不適合分泌症候群ですが、それはどんな症状なのか?
浮腫(ふしゅ)(むくみ)はなく、血中ナトリウムの低下の程度により、意識状態に変化がみられます。
血中ナトリウムがある程度まで低下すると、食欲不振、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、性格の変化などが起こります。
さらには、精神錯乱(さくらん)、けいれん、昏睡(こんすい)状態に至ります。
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH:Syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone ※ antidiuretic hormone : 抗利尿ホルモン 別称バソプレッシン ADH)
血中ナトリウムと浸透圧が低下し、一方、尿中の浸透圧が血中よりも高値を示し、ナトリウム排泄も低下しません。血中抗利尿ホルモンは低浸透圧にもかかわらず、相対的に高値を示します。
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群の特徴は、抗利尿ホルモン(バソプレシン)が変に分泌されてしまうため、「水分をため込む(むくみ)」「低ナトリウム血症(血液中の水分が多くなるため薄まる)・低浸透圧血症」
まとめ
低ナトリウム血症
低浸透圧血症
脱水症状がない
尿中へのナトリウム排泄持続
腎機能は正常
副腎皮質機能は正常
以上により、
(5)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)では、高ナトリウム血症を起こす。
では、低ナトリウム血症を引き起こすため、この問題は誤りという事を導けます。
その結果、
(3)褐色細胞腫では、高血圧を起こす。
が正答となります。
褐色細胞腫とは
副腎髄質の細胞から発生し、カテコールアミンを過剰に分泌するホルモン産生腫瘍。
そのカテコールアミンの血中濃度が高まると、
を引き起こす。
・カテコールアミン
ドーパミン・アドレナリン・ノルアドレナリンの総称。
副腎髄質細胞や脳や末梢の神経細胞。
アミノ酸のチロシンから副腎髄質で生合成され、ホルモンまたは神経伝達物質として重要な生理作用に関与する。
以上です。
言葉とその作用をつなげるためには、復習を何度でもしないといけないです。
この問題では7割以上の人が正解を導きだしています。
基本事項といってもよい問題なので、しっかりと身につけていきましょう。
今回は、ここまで。