糖質の体内代謝 2016年度 第75問
炭水化物の栄養に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)筋肉のグリコーゲンは、血糖値の維持に利用される。
(2)赤血球は、エネルギー源として乳酸を利用している。
(3)肝臓は、脂肪酸からグルコースを産生している。
(4)脳は、エネルギー源としてリボースを利用している。
(5)脂肪組織は、グルコースをトリアシルグリセロールに変換して貯蔵する。
・グリコーゲンの貯蔵量
グリコーゲンは、肝臓と筋肉に貯蔵されます。
濃度としては、
肝臓2~8%
筋肉0.5~1%
と、肝臓の方が高いが、総重量に関しては、筋肉の方が体重に占める割合が「肝臓 < 筋肉」のため、重量比は筋肉の方が多いです。
肝臓も筋肉も、エネルギーとしてグリコーゲンを生みだします。
ここで良く問われるのが、そのグリコーゲンがどこに使われるか?という事です。
肝臓は、グリコーゲンというエネルギーをグルコースに変換し、血液を通して「全身」に送り出す事が出来ます。
血液中の血糖値が低下してしまうと、維持するために血糖値を上昇させる必要があるからです。
低血糖になりすぎると、意識障害や死を招きかねないからです。
逆に、筋肉で生み出されたグリコーゲンは、「筋肉でのみ」利用が可能です。
筋肉の収縮に必要なエネルギーとしてのみ働きます。
同じグリコーゲンなのですが、なぜ利用方法が変わってくるのか?
それは、「グルコース-6-ホスファターゼ」という酵素が存在するかどうかによって左右されます。
その酵素は、肝臓には存在し、筋肉には存在しないので、筋肉ではグルコース6-リン酸をグルコースへと変換できず、血液中にグルコースを供給できないという事になります。
(1)筋肉のグリコーゲンは、血糖値の維持に利用される。
という問いは、誤りとなります。
赤血球のエネルギー源は、グルコースのみです。
赤血球自身がミトコンドリアを有していないため、TAC回路を利用できず、乳酸・脂肪酸・ケトン体をエネルギーとする事が出来ないからです。
よって、
(2)赤血球は、エネルギー源として乳酸を利用している。
という問いは、誤りとなります。
脂肪酸からグルコースを産生する事が出来ないので、誤りとなります。
糖新生によるグルコース産生の材料となるのは、「グリセロール」「乳酸」「アミノ酸」
脂肪酸は、β酸化によりアセチルCOAとなり、TAC回路でエネルギーとなります。
脂肪酸とグリセロールの違いを把握してないと迷いが生じる問題です。
ちなみにですが、脂肪酸の合成は細胞質、分解はミトコンドリアで行われます。
脳のエネルギー源は、グルコースとケトン体です。
リボースは五炭糖で、核酸を構成するために必要な要素となります。
(4)脳は、エネルギー源としてリボースを利用している。
この選択肢は、誤りとなります。
正解は、
(5)脂肪組織は、グルコースをトリアシルグリセロールに変換して貯蔵する。
です。
余ってしまったグルコース・アミノ酸は、トリアシルグリセロールとして貯蔵されます。
イメージとしては、ご飯を食べすぎて、エネルギーとして消費されなかったら脂肪になるという感じです。
この問題の正答(5)を選んだのは、51.3%だったようです。
(2)を選んでしまったのは、41.2%でした。
今回は、ここまで。