消化吸収と栄養素の体内動態についての問題 4問【管理栄養士国家試験過去問解説】
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A.消化酵素に関する記述である。正しいものを1つ。
1.α-アミラーゼは、チモーゲンとして分泌される。
2.トリプシンは、エキソ型酵素である。
3.膵リパーゼの働きは、胆汁酸によって抑制される。
4.ペプシンの至適pHは、弱アルカリ性である。
5.スクラーゼは、膜消化に関わる。
B.消化器系に関する記述である。正しいものを1つ。
1.アセチルコリンは、胃液の分泌を促進する。
2.ガストリンは、胃の運動を抑制する。
3.ヒスタミンは、胃酸の分泌を抑制する。
4.コレシストキニンは、膵臓からHCO3-の分泌を促進する。
5.セクレチンは、胃酸の分泌を促進する。
C.摂取した食物の消化管内における消化とその調節に関する記述である。正しいものを1つ。
1.トリプシンは、活性型の酵素たんぱく質として分泌される。
2.膵液中のアミラーゼは、でんぷんを消化してオリゴ糖を生成する。
3.セクレチンは、ペプシンの分泌を促進する。
4.コレシストキニンは、膵臓からの膵臓からHCO3-の分泌を促進する。
5.ガストリンは、胆嚢からの胆汁の分泌を促進する。
D.消化管ホルモンに関する記述である。正しいものを1つ。
1.ガストリンの分泌は、胃に食塊が入ると抑制される。
2.ガストリンの分泌は、セクレチンによって促進される。
3.セクレチンの分泌は、十二指腸内H+濃度の上昇によって抑制される。
4.コレシストキニンの分泌は、消化物中のペプチドによって促進される。
5.膵臓からのHCO3-の分泌は、コレシストキニンによって促進される。
続いて回答と解説。
A.正解5
1.
「ペプシノーゲン等」は、チモーゲンとして分泌される。
<α-アミラーゼ>
ジ(ヂ)アスターゼとも称される、膵液や唾液に含まれる消化酵素。
グリコシド結合を加水分解することでデンプン中のアミロースやアミロペクチンを、単糖類であるブドウ糖や二糖類であるマルトースおよびオリゴ糖に変換する。
<チモーゲン>
酵素の前駆体で通常は酵素活性を示さない。
ペプシンやトリプシンなど細胞の外で働くプロテアーゼの多くは、細胞の内部で活性のない酵素前駆体(ペプシノーゲンやトリプシノーゲンなど)として生合成されて細胞の外に分泌され、そして、実際に働くべきところに到着してから他のプロテアーゼなどによって限定分解を受けて活性化される。
もし、細胞の内部で活性がある状態で合成されると、細胞自身のタンパク質が分解されて細胞がダメージを受けてしまう。
それを防ぐためにプロテアーゼの酵素前駆体(チモーゲン)にはその酵素活性を抑える部分があり、その部分が限定分解で取り除かれると活性化するしくみになっている。
タンパク質の消化酵素であるペプシン、トリプシン、キモトリプシンはいずれもチモーゲンである。
・ペプシノーゲン(胃から分泌)→ペプシン(芳香族アミノ酸、ロイシンを切るエンド型)
・トリプシノーゲン(膵臓から分泌)→トリプシン(十二指腸で塩基性アミノ酸カルボキシル基を切るエンド型)
・キモトリプシノーゲン(膵臓から分泌)→キモトリプシン(十二指腸で芳香族アミノ酸カルボキシル基を切るエンド型)
2.
トリプシンは、「エンド型酵素」である。
トリプシノーゲン(膵臓から分泌)→トリプシン(十二指腸で塩基性アミノ酸カルボキシル基を切るエンド型)
分解反応に関与する酵素に関しては分解の形式に基づき「endo (エンド) 型酵素」と「exo (エキソ) 型酵素」に分類されます。
endo 型酵素:高分子の内部を分解する酵素で、一般に高い基質特異性を示す。
exo 型酵素:分子を端から分解する酵素で、一般にあまり基質特異性は高くない。
エンド(endo)とは「内」や「内へ」などの意味があり、内側から分解されるというイメージ。
エキソ(exso)とは「外」や「外へ」などの意味があり、外側から順に分解されるというイメージを持つといいかもしれない。
イメージとして、1本の紐を大胆に真ん中からハサミで切っても問題無い大雑把さが許されるのがエンド型酵素で、丁寧に端っこの結び目をほどいてから1つずつ外していくような手順が必要なのがエキソ型酵素。
エンド型酵素の例
トリプシン:リジン、アルギニンのカルボキシ基側を加水分解する。
制限酵素(エンドヌクレアーゼ):DNA内部の特定の塩基配列を認識して加水分解する。
エキソ型酵素の例
カルボキシペプチダーゼ:タンパク質のC末端側から順に加水分解する。
アミノペプチダーゼ:タンパク質のN末端側から順に加水分解する。
等
3.
膵リパーゼの働きは、胆汁酸によって「促進される」。
膵リパーゼ:膵で合成され、膵液中に分泌されてトリグリセリド(中性脂肪)を加水分解する消化酵素
<胆汁酸>
胆汁の主成分で、肝臓で作られる黄色透明の液体。
胆汁の成分は、胆汁酸、リン脂質、コレステロール、胆汁色素(主にビリルビン)などの有形成分とナトリウムイオン、塩化物イオン、炭酸イオンなどの電解質からなる。
食品に含まれる脂肪の多くは、化学的に安定した中性脂肪の形をしている。
体内に入ると中性脂肪は十二指腸で胆汁により乳化される。
次に膵臓からの消化酵素リパーゼの働きで、脂肪酸を一つつけたままのモノグリセリドと脂肪酸、グリセロールなどに分解される。
中性脂肪→胆汁酸(胆汁の主成分)で乳化→膵リパーゼでモノグリセリド・脂肪酸・グリセロール等に分解
という手順を踏むのが正常な生理作用。連動して分解を行なうので、胆汁酸(による乳化)により膵リパーゼが働きやすくなるよう促進される。
4.
ペプシンの至適pHは、「酸性」である。
ペプシンは胃で作用し至適pHは酸性。
トリプシン、キモトリプシンは十二指腸で作用するので至適pHは弱アルカリ性である。
5.
正答
スクラーゼ、膜消化に関わる。
<スクラーゼ(sucrase)>
スクロースの1,2-グリコシド結合を加水分解する酵素である。
グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)を生成する。
また、ヒトなどにおいて、消化管内へと分泌される消化酵素の1つでもある。
管内消化:十二指腸に分泌された膵液と食物が混じり合い、膵液に含まれる消化酵素により食物を消化すること
膜消化 :管内消化により断片化した食物を小腸粘膜上に存在する消化酵素で分解すること。
デンプンなど多糖類は、アミラーゼにより管内消化を受けて二糖類になる。
二糖類は粘膜上にある二糖類分解酵素(マルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼ)により膜消化を受けて単糖類となり吸収される。
たんぱく質はトリプシンなどのたんぱく質分解酵素により管内消化を受けてジペプチドまたはトリペプチドになる。
ジペプチドやトリペプチドは、粘膜上にあるジペプチダーゼやトリペプチダーゼにより膜消化を受けてアミノ酸となり吸収される。
B.正解1
1.
正答
アセチルコリンは、胃液の分泌を促進する。
アセチルコリン(Acetylcholine, ACh)は、運動神経の神経筋接合部、交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出され、神経刺激を伝える神経伝達物質である。コリンの酢酸エステル化合物。
副交感神経が興奮すると消化機能も活発になるため、胃液分泌が促進される。
2.
ガストリンは、胃の運動を「促進する」。
<ガストリン(gastrin)>
主に胃の幽門前庭部に存在するG細胞から分泌されるホルモン。
胃主細胞からのペプシノゲン分泌促進作用、胃壁細胞からの胃酸分泌促進作用、胃壁細胞増殖作用、インスリン分泌促進作用などが認められている。
ガストリン分泌はプログルミドやセクレチンなどによって抑制される。
3.
ヒスタミンは、胃酸の分泌を「促進する」。
<ヒスタミン>
アミノ酸であるヒスチジンから合成される。
末梢、中枢神経系に広く分布する生理活性物質で、 生体内で炎症、アレルギー反応、胃酸分泌、神経伝達に関与している。
ヒスタミンは、主に肥満細胞に存在する酵素により生合成され、そこで作用もしくは貯蔵される。
※「主に肥満細胞」としていて、他には白血球、胃腸の細胞、脳の神経細胞などあるけど覚えるのは肥満細胞だけでいいよ。
4.
コレシストキニンは、膵臓から「膵酵素」の分泌を促進する。
HCO3-(重炭酸イオン)を分泌するのは「セクレチン」
消化管ホルモンで出題頻度の高い3種
コレシストキニン:消化管ホルモンの一つで、十二指腸や空腸のI細胞から分泌される。
消化管ホルモンの他には、ガストリン・セクレチンがある。
ガストリン:胃のG細胞より分泌され、胃酸分泌促進作用がある。胃に食塊が入ると分泌が高まる。
セクレチン:小腸のS細胞から分泌される。食べ物が胃から十二指腸へ移動するとセクレチンが分泌され、胃酸分泌抑制と、膵液(重炭酸イオン)分泌が促進される。胃を通過した食べ物は胃酸の影響で強い酸性になっているため、重炭酸イオンを多く含む膵液を分泌して中和させる。
コレシストキニン:小腸のI細胞から分泌される。セクレチン同様膵液分泌を促すホルモンだが、この膵液は「消化酵素を多く含む膵液」である。また、胆嚢を収縮させる働きがあり、胆嚢の中の胆液が押し出されて分泌促進される。
5.
セクレチンは、胃酸の分泌を「抑制」する。
セクレチン:小腸のS細胞から分泌される。食べ物が胃から十二指腸へ移動するとセクレチンが分泌され、胃酸分泌抑制と、膵液(重炭酸イオン)分泌が促進される。胃を通過した食べ物は胃酸の影響で強い酸性になっているため、重炭酸イオンを多く含む膵液を分泌して中和させる。
C.正解2
1.
トリプシンは、「不活性型の酵素たんぱく質」として分泌される。
不活性型のトリプシノーゲンとして分泌される。
トリプシノーゲン(膵臓から分泌)→トリプシン(十二指腸で塩基性アミノ酸カルボキシル基を切るエンド型)
2.
正答
膵液中のアミラーゼは、でんぷんを消化してオリゴ糖を生成する。
<α-アミラーゼ>
ジ(ヂ)アスターゼとも称される、膵液や唾液に含まれる消化酵素。
グリコシド結合を加水分解することでデンプン中のアミロースやアミロペクチンを、単糖類であるブドウ糖や二糖類であるマルトースおよびオリゴ糖に変換する。
3.
「ガストリン」は、ペプシンの分泌を促進する。
<ガストリン(gastrin)>
主に胃の幽門前庭部に存在するG細胞から分泌されるホルモン。
胃主細胞からのペプシノゲン分泌促進作用、胃壁細胞からの胃酸分泌促進作用、胃壁細胞増殖作用、インスリン分泌促進作用などが認められている。
ガストリン分泌はプログルミドやセクレチンなどによって抑制される。
4.
「セクレチン」は、膵臓からの膵臓からHCO3-の分泌を促進する。
セクレチン:小腸のS細胞から分泌される。食べ物が胃から十二指腸へ移動するとセクレチンが分泌され、胃酸分泌抑制と、膵液(重炭酸イオン)分泌が促進される。胃を通過した食べ物は胃酸の影響で強い酸性になっているため、重炭酸イオンを多く含む膵液を分泌して中和させる。
5.
「コレシストキニン」は、胆嚢からの胆汁の分泌を促進する。
コレシストキニン:小腸のI細胞から分泌される。セクレチン同様膵液分泌を促すホルモンだが、この膵液は「消化酵素を多く含む膵液」である。また、胆嚢を収縮させる働きがあり、胆嚢の中の胆液が押し出されて分泌促進される。
D.正解4
1.
ガストリンの分泌は、胃に食塊が入ると「促進」される。
<ガストリン(gastrin)>
主に胃の幽門前庭部に存在するG細胞から分泌されるホルモン。
胃主細胞からのペプシノゲン分泌促進作用、胃壁細胞からの胃酸分泌促進作用、胃壁細胞増殖作用、インスリン分泌促進作用などが認められている。
ガストリン分泌はプログルミドやセクレチンなどによって抑制される。
ガストリン:胃のG細胞より分泌され、胃酸分泌促進作用がある。胃に食塊が入ると分泌が高まる。
2.
ガストリンの分泌は、セクレチンによって「抑制」される。
セクレチン:小腸のS細胞から分泌される。食べ物が胃から十二指腸へ移動するとセクレチンが分泌され、胃酸分泌抑制と、膵液(重炭酸イオン)分泌が促進される。胃を通過した食べ物は胃酸の影響で強い酸性になっているため、重炭酸イオンを多く含む膵液を分泌して中和させる。
食塊が胃を通過して小腸(十二指腸)に入ると、胃での消化は必要でなくなるため、胃酸分泌の抑制をする。
3.
セクレチンの分泌は、十二指腸内H+濃度の上昇によって「促進」される。
H+(酸性)濃度が高い消化物が十二指腸に流入してくると、消化管保護のためセクレチンが分泌され、重炭酸イオン(HCO3-:アルカリ濃度が高い)を含んだ膵液が分泌され、中和するよう働く。
4.
正答
コレシストキニンの分泌は、消化物中のペプチドによって促進される。
たんぱく質分解産物や、脂肪の刺激により分泌が促進される。消化酵素(膵液)を分泌しないといけないため。
5.
膵臓からのHCO3-の分泌は、「セクレチン」によって促進される。
セクレチン:小腸のS細胞から分泌される。食べ物が胃から十二指腸へ移動するとセクレチンが分泌され、胃酸分泌抑制と、膵液(重炭酸イオン)分泌が促進される。胃を通過した食べ物は胃酸の影響で強い酸性になっているため、重炭酸イオンを多く含む膵液を分泌して中和させる。
今回は以上。
ポイントを絞れば、あとは繰り返すことで見につきやすくなると思います。
繰り返しが大事です!
何回繰り返すの?
正答を導きだすための理論を身につけるまでです。
頑張っていきましょう!!