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神経疾患の成因・病態・診断・治療の概念についての問題 4問【管理栄養士国家試験過去問解説】

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A.神経疾患に関する記述である。正しいものを2つ。

 

1.アルツハイマー病は、認知症の原因となる。
2.アルツハイマー病には、ドーパミン補充が有効である。
3.パーキンソン病の原因は、アミロイドβたんぱくの脳内蓄積である。
4.パーキンソン病では、嚥下障害をきたす。
5.ウェルニッケ脳症では、ビタミンB6の欠乏で起きる。

 


B.神経系疾患に関する記述である。正しいものを2つ。

 

1.ウェルニッケ脳症では、ビタミンB12欠乏で起こる。
2.アルツハイマー病では、脳萎縮がみられる。
3.アルツハイマー病では、見当識は保たれる。
4.パーキンソン病では、片麻痺がみられる。
5.パーキンソン病では、錐体外路症状がみられる。

 

 

C.神経疾患に関する記述である。正しいものを1つ。

 

1.脚気では、末梢神経の障害がみられる。
2.葉酸欠乏症では、脊髄の変性がみられる。
3.レビー小体型認知症の原因は、脳血管障害である。
4.アルツハイマー認知症では、パーキンソン病様症状がみられる。
5.パーキンソン病では、錐体路の機能障害がみられる。

 

 

D.神経疾患に関する記述である。正しいものを1つ。

 

1.パーキンソン病では、筋緊張低下がみられる。
2.レビー小体型認知症は、ウイルス感染により起こる。
3.脳血管性認知症では、感情失禁がみられる。
4.アルツハイマー病では、症状が階段状に進行する。
5.アルツハイマー病では、まだら認知症がみられる。

 

 

 

 

 

 


続いて回答と解説。

 

 

 

 

 

 

 

A.正解1と4

 

1.
正答
アルツハイマー病は、認知症の原因となる。

 

アルツハイマー病>
脳が萎縮していく病気である。アルツハイマー認知症はその症状であり、認知機能低下、人格の変化を主な症状とする認知症の一種であり、認知症の60-70%を占める。
日本では、認知症のうちでも脳血管性認知症、レビー小体病と並んで最も多いタイプである。
症状は進行する認知障害(記憶障害、見当識障害、学習障害、注意障害、視空間認知障害や問題解決能力の障害など)であり、生活に支障が出てくる。
重症度が増し、高度になると摂食や着替え、意思疎通なども出来なくなり、最終的には寝たきりになる。
「階段状に進行する(ある時点を境にはっきりと症状が悪化する)脳血管性認知症」と異なり、徐々に進行する点が特徴的。
症状経過の途中で、被害妄想や幻覚(とくに幻視)が出現する場合もある。
暴言・暴力・徘徊・不潔行為などの問題行動(いわゆるBPSD)が見られることもあり、介護上、大きな困難を伴うため、医療機関受診の最大の契機となる。
不可逆的な進行性の脳疾患で、現在のところ、進行を止めたり、回復する治療法は存在していない。

 

アルツハイマー病では、脳の神経細胞が減少する、脳の中で記憶を司る「海馬」を中心に脳全体が萎縮する、脳に「老人斑」というシミが広がる、脳の神経細胞に糸くず状の「神経原線維変化」が見つかるといった変化が現れることがわかってきている。
脳の中にβアミロイドと呼ばれるタンパク質がたまり出すことが原因の一つとされていて、βアミロイドが脳全体に蓄積することで健全な神経細胞を変化・脱落させて、脳の働きを低下させ、脳萎縮を進行させると言われている。

 

2.
パーキンソン病」には、ドーパミン補充が有効である。

 

パーキンソン病
手の震え・筋肉のこわばり・摂食嚥下障害・動作や歩行の困難・姿勢反射(転びやすい)など、運動障害を示す進行性の神経変性疾患である。
進行すると自力歩行も困難となり、車椅子や寝たきりになる場合がある。
非運動症状では、便秘・排尿障害・発汗異常などを引き起こし、セロトニン分泌にも影響を与えて不眠症になったり異常行動が現れる事もある。
40歳以上の中高年の発症が多く、特に65歳以上の割合が高い。
錐体外路症状を呈し、アルツハイマー病と並んで頻度の高い神経変性疾患と考えられている。
日本では難病(特定疾患)に指定されている。
本症以外の変性疾患などによりパーキンソン様症状が見られるものをパーキンソン症候群と呼ぶ。

 

パーキンソン病を発症すると、脳内の快楽物質とも呼ばれる神経伝達物質ドーパミン」が減少し、それによって体の運動機能に障害が出るとされている。
パーキンソン病の症状の原因と考えられているドーパミンの減少は、中脳の中にある「黒質」と呼ばれる部分で起こる。
パーキンソン病の原因ははっきりと解明されてない、黒質の中のドーパミン神経が変性して剥がれ落ち、その部分に異常なタンパク質が集まることが確認されている。

 

3.
アルツハイマー病」の原因は、アミロイドβたんぱくの脳内蓄積である。

 

中脳黒質ドーパミン神経細胞の変性により起こるため、治療としてドーパミン補充が有効となる。

 

4.
正答
パーキンソン病では、嚥下障害をきたす。

 

5.
ウェルニッケ脳症では、「ビタミンB1」の欠乏で起きる。

 

<ウェルニッケ脳症>
ビタミンB1チアミン)の欠乏によって起こる脳症のこと。

 

(以下参照。試験対策としては、「ウェルニッケ脳症=ビタミンB1不足」という関連付けが出来ればOK)

 

ビタミンB1の欠乏だけでも発症するが、アルコール多飲者に多くおこるため、アルコールも複合的に影響しているといわれている。
ウェルニッケ脳症はビタミンB1欠乏症により、運動失調や、後遺症として(記憶障害を伴う)コルサコフ症候群を引き起こす。
眼球運動障害をおこすこともあり、外側に目を動かせなくなり寄り目になってしまうことがある。
運動失調では、急激に歩行が不安定になりどこかにつかまりながら歩くようになる。
意識障害については、特に特徴的な症状はなく、軽い意識障害からこん睡状態になることもある。
ウェルニッケ脳症がある程度回復してくると、目がゆれて、物が二重に見えたり、めまいがしたりする。精神的な症状により、無力や無気力になり、うつになってしまうこともある。

 


B.正解2と5

 

1.
ウェルニッケ脳症では、「ビタミンB1欠乏」で起こる。

 

2.
正答
アルツハイマー病では、脳萎縮がみられる。

 

3.
アルツハイマー病では、見当識は「障害される」。

 

見当識(けんとうしき)>
現在の年月や時刻、自分がどこに居るかなど基本的な状況把握のこと。
見当識が保たれているかどうかが意識障害の指標となる。
俗に「見当違い」というときの見当(けんとう)が語源で、古くは料簡(りょうけん)、指南力(しなんりょく)ともいった。

 

4.
パーキンソン病では、片麻痺が「みられない」。

 

パーキンソン病では、カテコールアミンの前駆体であるドーパミンが低下する事が原因となり、振戦・筋の固縮等がみられる。

 

5.
正答
パーキンソン病では、錐体外路症状がみられる。

 

錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう)>
錐体外路の障害で生じた症状である。
錐体外路は、錐体路以外の全ての中枢神経系の経路のことで姿勢・運動に対する基本的かつ無意識的な運動をコントロールし、運動が円滑に行うことができるように筋緊張などを調節している。
自分の意思とは関係なく症状が出現し、不随意運動による症状と筋緊張の異常を認め、明らかな運動麻痺が無いことが特徴である。

 

<以下参照 ここまで掘り下げた内容は試験には出ないけど、イメージを掴みたい人は少し長いけどみてね>

 

錐体外路症状の種類

・固縮:歯車様固縮と鉛管様固縮に分類される。
歯車様固縮は、関節屈伸運動時にガタガタとした断続的な抵抗を感じるもので、パーキンソン病に特徴的な固縮である。
鉛管様固縮は、抵抗を感じるもので、非特異的な固縮である。

 

・無動:動作が少なくなり、動作が緩慢となり、進行すると動けなくなる。
この動作の減少を寡動、動作の緩慢を動作緩慢、動作の欠如を無動と呼ぶ。
パーキンソン病でみられる仮面様顔貌、すくみ足、瞬きの減少などは無動によるものと考えられる。

 

・振戦:静止時振戦、姿勢時振戦、運動時振戦に分類される。
パーキンソン病では静止時振戦が特徴的で、通常、片側の上肢に発症、次に同側下肢、後に対側の上肢下肢へとみられるようになる。

 

・舞踏運動:顔をしかめたり、首を回旋させたり、手足を伸展・屈曲・開閉・回旋させたりする。

 

・片側バリズム:振幅が大きい素早い運動。上肢または下肢を投げ出すような激しい動きでパターンは一定。
視床下核や、視床下核に投射する神経線維連絡の障害により、視床から大脳皮質への出力が異常に増大して出現すると考えられている。脳血管障害が原因として多いが、高血糖でも生じる。

 

・アテトーゼ:顔面・頸部にみられる持続の長い運動で、異常肢位がゆっくり捻れながら変化していくような動きである。
原因としては、周産期異常による脳性麻痺が多い。アテトーゼのみを呈することは稀で あり、舞踏運動、ジストニア、痙縮などを伴う場合が多い。

 

ジストニア:持続的な筋収縮により異常姿勢や局所(上肢・下肢等)の運動障害を来たす。
特徴として、主動筋と拮抗筋が同時に収縮する共収縮、姿勢異常や運動障害が一定のパターンをとる常同性、特定の感覚入力によって症状が改善する感覚トリック、ある特定の動作のみが障害される動作 特異性、起床時に症状が軽い早朝効果、などがある。

 


C.正解1

 

1.
正答
脚気では、末梢神経の障害がみられる。

 

脚気
ビタミン欠乏症の一つであり、重度で慢性的なビタミンB1チアミン)の欠乏によって心不全と末梢神経障害をきたす疾患である。
軽度のものはチアミン欠乏症と呼ばれる。
心不全によって足のむくみ、神経障害によって足のしびれが起きることから脚気と呼ばれる。
心臓機能の低下・不全(衝心、しょうしん)を併発したときは脚気衝心と呼ばれ、最悪の場合には死亡に至る。

 

2.
ビタミンB12欠乏症」では、脊髄の変性がみられる。

 

葉酸又はビタミンB12欠乏症ではDNA合成障害により「巨赤芽球性貧血」をきたす。
特に胃からの内因子分泌欠如によるビタミンB12欠乏では、神経障害や脊髄の変性がみられ、悪性貧血と呼ぶ。

 

<参照:脊髄の変性についての掘り下げ(試験ではここまで求められないですが、参考までに)>
ビタミンB12は肝臓に大量に貯蔵されているため、吸収障害が起こっても貯蔵ビタミンB12が枯渇して欠乏症状が出るまで数年以上かかる。
貧血による息切れ、動悸、疲労感、頭痛などのほか、Hunter舌炎と呼ばれる有痛性の舌炎や、末梢神経障害による知覚障害、進行すると脊髄での髄鞘形成障害による振動覚、位置覚の低下や、歩行障害、抑うつ、不眠、認知機能障害などを認める。
脊髄症状を示すものを亜急性連合性脊髄変性症と呼ぶ。
早期診断、治療が可能となった現在は、神経症状まで認める症例はまれである。

 

3.
「脳血管性認知症」の原因は、脳血管障害である。

 

<三大認知症とその主な原因>
アルツハイマー認知症アミロイドβたんぱくの蓄積
脳血管性認知症    :脳血管障害
レビー小体型認知症  :レビー小体の蓄積

 

4.
レビー小体型認知症」では、パーキンソン病様症状がみられる。

 

<三大認知症とその主な特徴>
アルツハイマー認知症:認知機能障害(物忘れ等)・もの盗られ妄想・徘徊・取り繕い等

 

脳血管性認知症    :認知機能障害(注意力・視覚等)・認知変動・幻想・妄想・うつ状態・パーキンソン症状・睡眠時の異常行動・自律神経症状等

 

レビー小体型認知症  :認知機能障害(まだら認知症)・手足のしびれ・麻痺・感情のコントロールがうまくいかない等

 

5.
パーキンソン病では、「錐体外路の機能障害」がみられる。

 

中脳の黒質神経細胞は大脳中心部の線条体に枝を伸ばしていて、その線条体神経細胞は大脳の運動系を司る運動連合野に枝を伸ばしています。
また、海場・嗅神経・大脳の前頭葉辺縁系といった精神症状や認知機能に関連する場所にも枝を伸ばしています。
黒質ドーパミンが製造されている部位で、ドーパミンが神経伝達の中心的な役割を担っています。
パーキンソン病では、黒質ドーパミン細胞が著明に減少するため、運動調節・精神症状・認知症などの症状が出現するようになる。

 

ちなみに黒質の変性した部分には、「レビー小体」がみられるのも特徴。

 


D.正解3

 

1.
パーキンソン病では、「筋緊張亢進」がみられる。

振戦・筋の固縮等がみられる。

 

2.
レビー小体型認知症は、「レビー小体の蓄積」により起こる。

 

3.
正答
脳血管性認知症では、感情失禁がみられる。

感情失禁:少しの刺激で激しい情動が起こり、感情を上手くコントロールできない状態

 

4.
「脳血性認知症」では、症状が階段状に進行する。

 

アルツハイマー病:緩徐に認知機能が低下していく
脳血管性認知症 :脳血管障害が起こるたび、段階状に認知機能が低下していく

 

5.
「脳血管性認知症」では、まだら認知症がみられる。

 

アルツハイマー病        :全体的な記憶障害がみられる
脳血管性認知症でのまだら認知症 :全体的な記憶障害ではなく、一部の記憶が保たれている状態

 


今回は以上。
結構参考部分を掘り下げましたけど、情報の取捨選択は自分でやってね。
必要だと思う情報はしっかり把握して、そうでないものは流す。

それくらいしないと、時間はいくらあっても足りませんからね。

繰り返しが大事です!
何回繰り返すの?
正答を導きだすための理論を身につけるまでです。

頑張っていきましょう!!