行動科学の理論とモデルについての問題その2 4問【管理栄養士国家試験過去問解説】
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A.「牛乳は苦手だけど、明日から残さず飲もうと思います」と話す小学生Aさんへの給食指導である。トランスセオレティカルモデルに基づいた指導として、最も適当なものを1つ。
1.牛乳に含まれる主な栄養素について説明する。
2.牛乳を残さず飲めるようになったら、家族がどう思うかを考えさせる。
3.牛乳を飲むと、身体にどのような影響が出るのかを考えさせる。
4.牛乳を残した日は、好きなゲームを我慢すると決めるように勧める。
5.牛乳を残さず飲む事を、担任の先生と約束するように勧める。
B.生活習慣改善に消極的な中年男性に、計画的行動理論を用いた支援を行った。主観的規範を高めるための管理栄養士の発言である。正しいものを1つ。
1.体重が減ると検査結果もよくなりますよ。
2.ご家族は、あなたがずっと健康でいることを願っていますよ。
3.今よりも10分だけ多く、身体を動かしてみませんか?
4.簡単にできる食事の方法を紹介しましょう。
5.健康になった10年後の自分の姿を想像してみてください。
C.血圧が高めの高齢女性に、計画的行動理論を活用した減塩のための支援を行った。主観的規範を高めるための管理栄養士の発言である。正しいものを1つ。
1.減塩調味料を使えば、簡単に食塩摂取量を減らせますよ。
2.メニューに食塩相当量を示している飲食店を紹介しますね。
3.減塩を続ければ、健康診査の結果もよくなると思いますよ。
4.工夫次第で減塩した料理も、おいしく作れますよ。
5.ご家族も、あなたがずっと元気でいてくださることを願っていますよ。
D.後攻運動部の生徒に対する食生活改善のための支援と、社会的認知理論の構成要素の組み合わせである。正しいものを1つ。
1.食事内容を練習日記につけるよう勧める ――― 観察学習
2.望ましい食べ方をしている選手の例を紹介する ――― 結果期待
3.食生活を改善すれば、体力がつく事を説明する ――― 自己効力感
4.生徒の家族に、弁当の改善を提案する ――― 相互決定主義
5.できることからやってみようと話す ――― 自己制御
続いて回答と解説。
A.正答5
1.
牛乳に含まれる主な栄養素について説明する。
情報提供などにより、行動変容への意識を高める「意識の高揚」に該当し、無関心期から関心期へ変容させる支援内容。
2.
牛乳を残さず飲めるようになったら、家族がどう思うかを考えさせる。
行動変容する事で、自分の周囲へ及ぼす影響を考える「環境への再評価」に該当し、無関心期から関心期へ変容させる支援内容。
3.
牛乳を飲むと、身体にどのような影響が出るのかを考えさせる。
行動変容後、自分にとってどのような影響があるか考える「自己の再評価」に該当し、関心期から準備期へ変容させる支援内容。
4.
牛乳を残した日は、好きなゲームを我慢すると決めるように勧める。
行動変容を促したり、維持させるための強化(褒美や罰)を行う「強化マネジメント」に該当し、実行期から維持期へ変容させる支援内容。
5.正答
牛乳を残さず飲む事を、担任の先生と約束するように勧める。
「明日から〇〇しようと思う」という発言から、準備期に該当すると判断する。準備から実行期へ変容させるには、行動変容への自信を持ち、決意表明する「自己の解放」を用いる事が適当であると言える。
B.正答2
主観的規範:社会的な対人関係からの期待をいう
家族からの期待にこたえたいという主観的規範を高めて、行動変容への意志を持つよう支援する。
2.ご家族は、あなたがずっと健康でいることを願っていますよ。
C.正答5
1.
減塩調味料を使えば、簡単に食塩摂取量を減らせますよ。
行動コントロール感(行動する事に対しての容易さの事)を高めるための発言
減塩調味料の使用 → 減塩行動を容易にする
2.
メニューに食塩相当量を示している飲食店を紹介しますね。
行動コントロール感を高めるための発言
飲食店の活用 → 減塩行動を容易にする
3.
減塩を続ければ、健康診査の結果もよくなると思いますよ。
行動への態度(行動に対する気持ち)を高めるための発言
健康診断の結果の改善は、減塩行動のメリットを感じさせる。
4.
工夫次第で減塩した料理も、おいしく作れますよ。
行動への態度を高めるための発言
おいしい減塩食は、減塩行動のメリットを感じさせる。
5.正答
ご家族も、あなたがずっと元気でいてくださることを願っていますよ。
主観的規範:社会的な対人関係からの期待をいう
家族の元気でいて欲しいという願いを伝える事は、主観的規範を高める為に有効
D.正答4
1.
食事内容を練習日記につけるよう勧める ――― 「自己制御」
自己制御:自分の行動をコントロールすること
食事内容を記録することで、自分の行動を客観的に評価することができる → 自己制御に繋がる
2.
望ましい食べ方をしている選手の例を紹介する ――― 「観察学習」
観察学習:他人の行動をみたり、話しを聞いたりすることで、行動を学習していく事。モデリング学習ともいう
手本となる選手の例を紹介することで、自己効力感が生まれ、行動変容が促される。
3.
食生活を改善すれば、体力がつく事を説明する ――― 「結果期待」
結果期待:自分の行動がもたらす結果への期待
食生活を改善すること(自分の行動)により、体力がつく(結果への期待)を提示することで、行動変容が促される。
4.正答
生徒の家族に、弁当の改善を提案する ――― 相互決定主義
相互決定主義:行動が個人の認知能力や環境と相互に結びつき、影響し合っているという考え方
家族に食生活改善の支援を提案する事は、個人を取り巻く環境改善につながる。
5.
できることからやってみようと話す ――― 「自己効力感」
自己効力感:自分はその行動を上手くやる事が出来るという自信の事。セルフ・エフィカシー(self-efficacy)ともいう。
達成しやすい目標から始めるように促す事で、自己効力感が高まる。
今回は以上。
繰り返しが大事です!
何回繰り返すの?
正答を導きだすための理論を身につけるまでです。
頑張っていきましょう!!