水・電解質の栄養的意義についての問題 5問【管理栄養士国家試験過去問解説】
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A.水の出納に関する記述である。正しいものを1つ。
1.栄養素1g当たりの代謝水は、脂質が最も少ない。
2.不可避尿量は、摂取した水分量に影響される。
3.不感蒸泄では、水のみが失われる。
4.1日に必要な水分摂取の最低量は、不可避尿量と随意尿(可避尿)量の合計である。
5.低張性脱水では、電解質を含まない水を補給する。
B.体水分に関する記述である。正しいものを1つ。
1.成人の体重当たりの体水分量は、女性に比べ男性の方が少ない。
2.低張性脱水では、血圧が低下する。
3.浮腫では、細胞間液(間質液)量が変化しない。
4.血症アルブミン濃度が低下すると、膠質浸透圧が上昇する。
5.バソプレシンは、尿細管での水の再吸収を抑制する。
C.血症・間質液(組織間液)及び細胞内液に存在する電解質として、最も濃度の高い陽イオンの組み合わせである。正しいものを1つ。
血漿――間質液――細胞内液 の並びです。
1.カリウム ――ナトリウム――ナトリウム
2.カリウム ――カリウム ――ナトリウム
3.ナトリウム――カリウム ――カリウム
4.ナトリウム――ナトリウム――カリウム
5.ナトリウム――ナトリウム――ナトリウム
D.水と電解質に関する記述である。正しいものを1つ。
1.成人男性の血漿量は、体水分量の約70%を占める。
2.糖質と脂質、各々1gから生成される代謝水は、同量である。
3.不感蒸泄には、発汗が含まれる。
4.水分欠乏型脱水では、血漿浸透圧が低くなる。
5.バソプレシンの分泌は、体水分量が不足すると促進される。
E.電解質に関する記述である。正しいものを1つ。
1.カリウムイオン濃度は、細胞内液より細胞外液の方が高い。
2.不感蒸泄では、電解質の喪失が起こる。
3.低張性脱水では、ナトリウムを含まない水を補給する。
4.重炭酸イオンは、血液の酸塩基平衡の調節に関わる。
5.血中ナトリウムイオン濃度が上昇すると、血漿浸透圧が低下する。
続いて回答と解説。
A.正答3
1.
栄養素1g当たりの代謝水は、脂質が最も「多い」。
代謝水:栄養素が体内で代謝される際に生じる水
糖質:脂質:たんぱく質=0.6g:1.07g:0.41g で、脂質が一番多い。
2.
不可避尿量は、摂取した水分量に「影響されない」。
不可避尿量:体内で産生される老廃物を排泄するために必要な尿。量は一定。
3.正答
不感蒸泄では、水のみが失われる。
不感蒸泄:汗とは別に自然と皮膚から蒸発したり、呼気から出ていく水分の事。
4.
1日に必要な水分摂取の最低量は、「不可避尿量と糞便中水分量と不感蒸泄量の合計」である。
5.
低張性脱水では、電解質を「含む水」を補給する。
塩分欠乏により起こる低張性脱水では、電解質を含む水を補給する必要がある。
<脱水>
体内の水分量が正常以下になった状態。血漿浸透圧により高張性・低張性・等張性脱水に分けられるが、ここでは高張性と低張性脱水についてふれます。
高張性脱水(水分欠乏型脱水):細胞外液の水が減り、血液濃度が高くなった状態。
水分は、血液濃度を下げるため、細胞内から細胞外へ移行する。
症状としては口渇感・口腔粘膜の乾燥等
低張性脱水(塩分欠乏型脱水):細胞外液のナトリウムが減り、血液濃度が低くなった状態。
水分は、血液濃度を上げるため、細胞外から細胞内へ移行する。
症状としては下痢・嘔吐・血圧低下等
B.正答2
1.
成人の体重当たりの体水分量は、「男性」に比べ「女性」の方が少ない。
脂肪組織は水分含量が少ないため、脂肪組織が多いと体水分量は少なくなる。一般的に女性は男性に比べ脂肪含有量が多いため、体水分量が少なくなる。
2.正答
低張性脱水では、血圧が低下する。
低張性脱水(塩分欠乏型脱水):細胞外液のナトリウムが減り、血液濃度が低くなった状態。
水分は、血液濃度を上げるため、細胞外から細胞内へ移行する。
症状としては下痢・嘔吐・血圧低下等
3.
浮腫では、細胞間液(間質液)量が「増加する」。
浮腫:細胞外液のうち間質液が病的に増加した状態。局所的に生じる局所性浮腫と、全身的に増加をきたす全身性浮腫がある。
細胞外液:細胞外に存在する体液の総称であり、血漿と間質液より構成される。
4.
血症アルブミン濃度が低下すると、膠質浸透圧(こうしつしんとうあつ)が「低下する」。
血漿浸透圧は電解質、膠質浸透圧はアルブミンによって維持されている。
たんぱく質には水を引き付ける力があるが、それを膠質浸透圧という。実際の膠質浸透圧を生み出しているたんぱく質は血清アルブミンであり、血清アルブミン量が低下すると、全身の浮腫が生じる。
膠質:コロイド・たんぱく質
5.
バソプレシンは、尿細管での水の再吸収を「促進する」。
バソプレシン:抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone;ADH)ともいい、利尿を妨げる働きをもつホルモンである。脳下垂体から分泌され、血管を収縮させて血圧を上げる効果がある。
抗利尿ホルモンとすると、すぐに解答に繋がりやすくなるため、バソプレシンとかADHといった言葉を用いて出題する傾向にあります。
C.正答4
血漿――間質液――細胞内液 の並びです。
4.ナトリウム――ナトリウム――カリウム
体液は細胞内液と細胞外液(血漿・間質液)に分けられる。
細胞内液で最も多い陽イオンは「カリウム」、細胞外液で最も多い陽イオンは「ナトリウム」。
<補足>
水分は体重の約60~70%と幅があるが、60%とすると
その内訳は「細胞内液:間質液:血漿=40%:15%:5%」
血漿と間質液の間には「毛細血管壁」があり、たんぱく質は通れないが電解質は自由に通れる。
間質液と細胞内液の間には「細胞膜」があり、電解質は通りにくいが水は自由に通れる。
D.正答5
1.
成人男性の血漿量は、体水分量の「約5%」を占める。
2.
糖質と脂質、各々1gから生成される代謝水は、「糖質に比べ脂質が多い」。
代謝水:栄養素が体内で代謝される際に生じる水
糖質:脂質:たんぱく質=0.6g:1.07g:0.41g で、脂質が一番多い。
3.
不感蒸泄には、発汗が「含まれない」。
不感蒸泄:汗とは別に自然と皮膚から蒸発したり、呼気から出ていく水分の事。
4.
水分欠乏型脱水では、血漿浸透圧が「高くなる」。
高張性脱水(水分欠乏型脱水):細胞外液の水が減り、血液濃度が高くなった状態。
水分は、血液濃度を下げるため、細胞内から細胞外へ移行する。
症状としては口渇感・口腔粘膜の乾燥等
低張性脱水(塩分欠乏型脱水):細胞外液のナトリウムが減り、血液濃度が低くなった状態。
水分は、血液濃度を上げるため、細胞外から細胞内へ移行する。
症状としては下痢・嘔吐・血圧低下等
5.正答
バソプレシンの分泌は、体水分量が不足すると促進される。
不足した水分を補うため、バソプレシンによる水の再吸収が促進され、尿量も減る。
ガンガン汗をかくと、尿量が少なくなる事があると思いますが、この作用です。
E.正答4
1.
カリウムイオン濃度は、「細胞外液より細胞内液の方が高い」。
体液は細胞内液と細胞外液(血漿・間質液)に分けられる。
細胞内液で最も多い陽イオンは「カリウム」、細胞外液で最も多い陽イオンは「ナトリウム」。
2.
不感蒸泄では、電解質の喪失が「起こらない」。
不感蒸泄:汗とは別に自然と皮膚から蒸発したり、呼気から出ていく水分の事。
3.
低張性脱水では、ナトリウムを「含む水」を補給する。
ナトリウムが減っているので、ナトリウムを含む水分を補給しないと解消しない。
「低」張性=「塩分濃度が低」くて起きるので塩分(と水分)補給
「高」張性=「塩分濃度は高」くて起きるので薄めるために水分補給
という感じで覚えてました。
低張性脱水(塩分欠乏型脱水):細胞外液のナトリウムが減り、血液濃度が低くなった状態。
水分は、血液濃度を上げるため、細胞外から細胞内へ移行する。
症状としては下痢・嘔吐・血圧低下等
4.正答
重炭酸イオンは、血液の酸塩基平衡の調節に関わる。
酸塩基平衡(さんえんきへいこう):体内での酸と塩基のバランスを指し、主に肺と腎臓で調節される。
酸塩基平衡異常の診断に必要な項目には「㏗・重炭酸イオン・動脈血二酸化炭素分圧」の3つがあるが、参考程度にしてね。
5.
血中ナトリウムイオン濃度が上昇すると、血漿浸透圧が「上昇する」。
高張性脱水(水分欠乏型脱水):細胞外液の水が減り、血液濃度が高くなった状態。
水分は、血液濃度を下げるため、細胞内から細胞外へ移行する。
症状としては口渇感・口腔粘膜の乾燥等
今回は以上。
浸透圧は慣れないと混乱しやすいけど、仕組みがわかって理解出来ればサクッと解ける問題は多いので、しっかりと身に着けていきましょう!
繰り返しが大事です!
何回繰り返すの?
正答を導きだすための理論を身につけるまでです。
頑張っていきましょう!!