糖質の体内代謝についての問題 4問【管理栄養士国家試験過去問解説】
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A.炭水化物の栄養に関する記述である。正しいものを1つ。
1.筋肉のグリコーゲンは、血糖値の維持に利用される。
2.赤血球は、エネルギー源として乳酸を利用している。
3.肝臓は、脂肪酸からグルコースを産生している。
4.脳は、エネルギー源としてリボースを利用している。
5.脂肪組織は、グルコースをトリアシルグリセロールに変換して貯蔵する。
B.炭水化物の栄養に関する記述である。正しいものを1つ。
1.コリ回路では、アラニンからグルコースが産生される。
2.空腹時には、糖原性アミノ酸からグルコースが産生される。
3.組織へのグルコースの取り込みは、コルチゾールによって促進される。
4.健常者では、食後2時間で、血糖値が最大となる。
5.血糖値が低下すると、脂肪組織のトリアシルグリセロールの分解は抑制される。
C.糖質の代謝に関する記述である。正しいものを2つ。
1.腎臓は、糖新生を行なう。
2.吸収された単糖類は、リンパ管を介して肝臓に運ばれる。
3.肝臓は、グルコースから脂肪酸を合成できない。
4.骨格筋は、グルコース6-リン酸からグルコースを生成する。
5.脳は、飢餓の時にケトン体を利用する。
D.糖質の代謝に関する記述である。正しいものを1つ。
1.糖質の摂取量増加は、ビタミンB6の必要量を増加させる。
2.グルコースは、脂肪酸に変換されない。
3.グルコースは、可決アミノ酸に変換されない。
4.ペントースリン酸回路は、リボース5-リン酸を生成する。
5.赤血球には、解糖系が存在しない。
続いて回答と解説。
A.正解5
1.
筋肉のグリコーゲンは、血糖値の維持に「利用されない」。
血糖値の維持には、肝臓のグリコーゲンが利用される。
骨格筋と脳にはグルコース6-ホスファターゼが存在しないため。
2.
赤血球は、エネルギー源として「グルコース」を利用している。
骨赤血球髄から生まれるが、ミトコンドリアを持たないため、細胞の活動に必要なエネルギーは嫌気性解糖系と呼ばれる酵素によって糖(グルコース)を分解して得る。
乳酸、ピルビン酸、アミノ酸、プロピオン酸などから、おおむね解糖を逆行してD-グルコースをつくる経路を糖新生(Gluconeogenesis)という。
脂肪酸やアセチルCoAはピルビン酸に変換できないので,この代謝経路にのらない。
4.
脳は、エネルギー源として「グルコース」を利用している。
エネルギー源として利用できるのは、血糖値が平常値以上であれば「グルコース」を利用し、そうでなければ「ケトン体」という2種類を利用できる。
5.
正答
脂肪組織は、グルコースをトリアシルグリセロールに変換して貯蔵する。
肝臓や筋肉に貯蔵されるグリコーゲンには限界があるため、それ以上に摂取されたグルコースは脂肪組織へ取り込まれ、トリアシルグリセロールに変換して貯蔵される。
エネルギーとして消費出来なかった余剰な糖質は、体脂肪となって蓄えられるという事です。
B.正解2
1.
「グルコース・アラニン回路」では、アラニンからグルコースが産生される。
コリ回路では「乳酸」からグルコースが産生される。
「乳酸が溜まると肩こり(筋肉痛)」みたいな語呂合わせで覚えていたよ。
2.
正答
空腹時には、糖原性アミノ酸からグルコースが産生される。
<糖原性アミノ酸(Glucogenic amino acid)>
とは、脱アミノ化(アミノ基転移による場合を含む)を受けた後、炭素骨格が糖新生に用いられるアミノ酸のことである。
クエン酸回路の中間体であるオキサロ酢酸から解糖系(糖新生系)を経由して、グルコースに転換されうるアミノ酸のことである。
<参考>
糖原性アミノ酸の性質をもつアミノ酸
「セリン」「スレオニン」「グリシン」「アラニン」「システイン」「バリン」「アスパラギン」「アスパラギン酸」「アルギニン」「グルタミン」「グルタミン酸」「ヒスチジン」「プロリン」「メチオニン」「チロシン」「トリプトファン」「イソロイシン」「フェニルアラニン」
ケト原性アミノ酸の性質をもつアミノ酸
「ロイシン」「リシン」「チロシン」「トリプトファン」「イソロイシン」「フェニルアラニン」
例外は「ロイシン」と「リシン」
例外的に糖新生による糖(グルコース)合成の基質にはならない。
糖新生の基質となるアミノ酸(糖原性アミノ酸)は代謝の過程でオキサロ酢酸あるいはピルビン酸を生じるが、「ロイシン」と「リシン」はそれらを生じない点に注意が必要。
↑
紹介はしてるけど、勉強時間が無くて糖原性アミノ酸性質のアミノ酸の方は私は覚えきれなかったよ。覚えたのはケト原性の6種と例外部分くらい。
3.
組織へのグルコースの取り込みは、「インスリン」によって促進される。
インスリン:膵臓から分泌されるホルモンの一種。糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きを持つ。
<コルチゾール>
副腎皮質から分泌されるホルモンの一つ。
主な働きは、肝臓での糖の新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進、抗炎症および免疫抑制などで、生体にとって必須のホルモン。
4.
健常者では、「食後1時間」で、血糖値が最大となる。
健常者でない(糖尿病患者・インスリン抵抗性が高い)と血糖を取り込むことが出来ずに血糖値が上がり続け、2時間から3時間後にピークを迎える。そしてなかなか下がらない。
5.
血糖値が低下すると、脂肪組織のトリアシルグリセロールの分解は「促進」される。
血糖値が低下するという事はグルコース量が減っているという事なので、エネルギーを補うためにトリアシルグリセロールがエネルギーとして働くようになる。
肝臓や筋肉に貯蔵されるグリコーゲンには限界があるため、それ以上に摂取されたグルコースは脂肪組織へ取り込まれ、トリアシルグリセロールに変換して貯蔵される。
過剰な体脂肪を効率良く減らすためには、糖質摂取を抑える事が効果大ではある。
C.正解1かつ5
1.
正答
腎臓は、糖新生を行なう。
糖新生を行なうのは、肝臓と腎臓。
2.
吸収された単糖類は、「門脈」を介して肝臓に運ばれる。
肝臓や筋肉に貯蔵されるグリコーゲンには限界があるため、それ以上に摂取されたグルコースは脂肪組織へ取り込まれ、トリアシルグリセロールに変換して貯蔵される。
4.
骨格筋は、グルコース6-リン酸からグルコースを「生成できない」。
骨格筋と脳にはグルコース6-ホスファターゼが存在しないため生成できない。
5.
正答
脳は、飢餓の時にケトン体を利用する。
飢餓というイメージに惑わされないで欲しいが、忙しくて昼食を食べれなかった時、空腹感がしばらくしたら収まって食べなくても大丈夫なタイミングを経験したことがあると思います。その時にはエネルギーとしてケトン体が働いているので、それを「飢餓」と呼ぶのはいかがなものかと思うが、参考程度に。
D.正解4
1.
糖質の摂取量増加は、「ビタミンB1」の必要量を増加させる。
糖質はB1、脂質はB2、たんぱく質はB6が大きく関与する。
「P:F:C=6:2:1」
このようにまとめて覚えてました。
肝臓や筋肉に貯蔵されるグリコーゲンには限界があるため、それ以上に摂取されたグルコースは脂肪組織へ取り込まれ、トリアシルグリセロールに変換して貯蔵される。
4.
正答
ペントースリン酸回路は、リボース5-リン酸を生成する。
ペントースリン酸回路(pentose phosphate pathway: PPP)
解糖系のグルコース-6-リン酸から出発して、同じく解糖系のグリセルアルデヒド-3-リン酸へとつながる経路で、NADPHや、デオキシリボース、リボースといった核酸の生合成に不可欠な糖を含む各種ペントースの産生に関与する。
また、NADPHの供給源として脂質の生産にも関与している。
ペントースリン酸経路によって、1分子のグルコース-6-リン酸から1分子のCO2と2分子のNADPHが生成される。
5.
赤血球には、解糖系が「存在する」。
骨赤血球髄から生まれるが、ミトコンドリアを持たないため、細胞の活動に必要なエネルギーは嫌気性解糖系と呼ばれる酵素によって糖(グルコース)を分解して得る。
解糖系が存在しないとエネルギーを得る事が出来ず約120日も活動する事が出来ない。
今回は以上。
繰り返しが大事です!
何回繰り返すの?
正答を導きだすための理論を身につけるまでです。
頑張っていきましょう!!