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呼吸器疾患の成因・病態・診断・治療についての問題 3問【管理栄養士国家試験過去問解説】

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A.呼吸器疾患に関する記述である。正しいものを1つ。

 

1.COPD慢性閉塞性肺疾患)では、吸気時に口すぼめ呼吸がみられる。
2.COPDでは、安静時エネルギー消費量が減少する。
3.COPDでは、フィッシャー比が低下する。
4.気管支喘息では、発作時に気道が拡張する。
5.ツベルクリン反応は、結核に対する予防接種である。

 


B.COPD慢性閉塞性肺疾患)に関する記述である。正しいものを1つ。

 

1.わが国では、女性に多い。
2.吸気時に口すぼめ呼吸がみられる。
3.樽状胸郭(たるじょうきょうかく)がみられる。
4.動脈血中の酸素分圧は、上昇する。
5.病気分類には、肺活量が用いられる。

 

 

C.肺炎に関する記述である。正しいものを1つ。

 

1.クリプトコッカスは、細菌性肺炎の原因となる。
2.肺炎球菌は、非定型肺炎の原因となる。
3.市中肺炎は、入院後48時間以降に発症した肺炎である。
4.院内肺炎は、日和見感染であることが多い。
5.誤嚥性肺炎は、肺の上葉に好発する。

 

 

 

 

 


続いて回答と解説。

 

 

 

 

 

 

A.正解3

 

1.
COPD慢性閉塞性肺疾患)では、「呼気時」に口すぼめ呼吸がみられる。

 

COPDでは息苦しいため、呼気時(息を吐く時)に口をすぼめて口腔内圧を高める事で、気道閉塞を改善する口すぼめ呼吸を認める。

 

慢性閉塞性肺疾患
COPD:chronic obstructive pulmonary disease)
従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。
タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、息をするときに空気の通り道となる気管支や肺に障害が起きて呼吸がしにくくなる状態が続く。
喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。

 

症状:労作時呼吸困難(身体を動かした時の息切れ)、咳、喀痰(かくたん:タンを吐く事)・喘鳴(ぜんめい:呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーなどと音がすること)・体重減尐、食欲不振・抑鬱、不安などの精神症状


<口すぼめ呼吸>
鼻から息を吸った後、口をすぼめて長く息をはく呼吸法。
COPDでは呼吸をするたびに肺の中にはき出せない空気がたまって息苦しくなるが、口をすぼめて息をはくと気管支の内側に圧力がかかり、呼吸が速くなっても気管支のつぶれを防ぎながら、空気を効率よくはき出すことができる。

 

口すぼめ呼吸のイメージは腹式呼吸・・・と言って伝わるかな?
私はそんなイメージを持っていました。

 

2.
COPDでは、安静時エネルギー消費量が「増加」する。

 

呼吸運動が活発となるため、エネルギー消費量が増加する。

 

<補足>
COPDにやせ型の人が多い

呼吸筋を激しく使って呼吸するため、健康な人よりもたくさんのエネルギーが必要になる。
さらに、肺に生じた炎症が全身に広がるため、体の中で熱が発生し、エネルギーを消耗してしまう。COPDの人の1日に必要な安静時エネルギー量は、健康な人の約1.5倍と考えられている。
その一方で、肺が膨張し胃を圧迫するため満腹感を得やすく、常に息苦しさを感じているなどの理由で食事量が減り、摂取エネルギーは減少しやすくなる。

必要なエネルギー量は健康な人よりも多いのに、さまざまな理由が重なって十分な栄養が摂れないため、やせてしまう要因となる。


3.
正答
COPDでは、フィッシャー比が低下する。

 

<フィッシャー比>
分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acid: BCAA;イソロイシン・ロイシン・バリン)と、
芳香族アミノ酸(aromatic amino acid: AAA;チロシンフェニルアラニン)の
モル比(物質量の比の事)(BCAA/AAA)の事。
健常人のフィッシャー比は、3~4でほぼ一定である。肝機能が低下すると、肝臓のアミノ酸代謝異常が起こりチロシンフェニルアラニンの血中への供給量が増え、筋肉や心臓において分枝鎖アミノ酸が分解されることから、フィッシャー比の値が低下する。
アルブミン血症やタンパク質の異化亢進と関係している。

 

BCAAは主に骨格筋で代謝されるが、エネルギー消費増大に伴う異化の亢進と高インスリン血症により筋肉への取り込みが増加により、血中濃度が低下する。
一方、AAAは主に肝臓で代謝されるが、肝臓の代謝機能低下により、血中濃度が上昇する。
その結果、分子が低下して、分母が上昇するので、フィッシャー比は低下する。

フィッシャー比の低下は、脳内のアミノ酸バランスの異常(アミノ酸インバランス)は脳内アミンの代謝障害を引き起こし、肝性脳症の一因となる。

 

フィッシャー比を是正するためには、「BCAA」を投与する。(分母部分であるAAAではなく、分子部分であるBCAAを投与する事で、フィッシャー比を上昇させる。

 

4.
気管支喘息では、発作時に気道が「狭窄」する。

 

狭窄(きょうさく):間がすぼまって狭い事。
喘息(発作)時は、喘鳴(ぜんめい:呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーなどと音がすること)が伴います。これは気管支が狭窄しているからです。
口笛を吹く時に口をすぼめて(空気の通り穴を狭くして)音を鳴らすのと同じイメージです。

 

気管支喘息
急に空気の通り道となる気管支が狭くなってしまい、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」し始めて呼吸が苦しくなる状態(いわゆる発作)を繰り返す病気。
気管支に慢性的な炎症が起こっている状態。

 

5.
「BCG摂種」は、結核に対する予防接種である。

 

<BCG摂種>
乳幼児期にBCGを接種することにより、結核の発症を52~74%程度、重篤髄膜炎や全身性の結核に関しては64~78%程度予防することができると報告されている。
2020年初期(2019年後半から?)に発生した流行性ウイルスでは、アジア株でのBCG予防接種者は症状が劇症化しにくいという事で本当かどうかはしらないですが話題となり、争奪戦がくりひろげられたとかどうだとか。
それで少し有名になった「BCG予防接種」です。

 

ツベルクリン反応(検査)>
結核菌の感染を受けているかどうかを調べる検査。
陰性の場合は、結核に対する免疫を持っていないと考えられる。
陽性の場合は、結核菌に感染した場合やBCG接種により結核に対する免疫がすでに成立していると考えられます。

 


B.正解3

 

1.
わが国では、「男性」に多い。

 

平成26年患者数調査
性別でみると、男性18万3,000人、女性7万9,000人と、男性に多いのがこの疾患の特徴


2.
「呼気時」に口すぼめ呼吸がみられる。

 

3.
正答
樽状胸郭(たるじょうきょうかく)がみられる。

 

<樽状胸郭>
COPDの状態が長期化していると、胸郭が健常者と比べて大きくなり、横隔膜も下がった状態になる。
肺が肥大化し、心臓が圧迫された状態になってしまう。

ビア樽状胸郭とも言う。


肺がビア樽状になると、酸素を取り込むことが大変になります。
肺が大きく膨らみきっている状態のビア樽状から、さらに胸郭を動かして肺を広げるのが難しいためです。
細気管支は狭くなり、肺胞は酸素を取り込めなくなるので、息切れを起こしやすくなります。
また、息を吸えても吐くことができない状態となり、二酸化炭素濃度が増加して酸素濃度が低下し、努力性の呼吸や息苦しさが増します。
空気が肺の中に残るようになるので胸郭が広がってビール樽状胸郭や血中酸素濃度が低下することでチアノーゼ、ばち指がみられることもあります。

 

<ばち指(ばちゆび、撥指)>
上肢・下肢の指の先端が広くなり、爪の付け根が隆起し、凹みがなくなった状態を指す。
名称の由来は、肥厚した指が太鼓のバチ状であることから。
この症状自体に痛みなどはないが、重大な疾患の症状として現れる事が多い。
症状の進行は、まず母指・示指(じし:人さしゆび)から始まり、やがて他の指でも起こるようになる。

 

4.
動脈血中の酸素分圧は、「低下」する。

 

肺胞でのガス交換障害により、酸素の取り込み量が減少 → 動脈血中の酸素分圧が低下

 

5.
病気分類には、「1秒量」が用いられる。

 

<1秒率>
肺機能を調べる指標の一つ。
深く息を吸って一気に吐き出した空気量(これを努力性肺活量といいます)に対し、最初の1秒間で吐き出した量(1秒量)の割合を示したもの。
70%以上が正常だが、1秒率が低下している場合は閉塞性換気障害(気管支が狭くなっているために起こる呼吸機能障害)が疑われる。

 

COPDの診断は、スパイロメーターという器械を使った呼吸機能検査(スパイロ検査)によって行います。
パイロ検査はCOPDの診断には欠かせない検査で、肺活量と息を吐くときの空気の通りやすさを調べます。
COPD患者さんでは息が吐き出しにくくなっているため、1秒量(FEV1)を努力肺活量(FVC)で割った1秒率(FEV1%)の値が70%未満のとき、COPDと診断されます。
また病気の進行に伴い、1秒量が予測値(年齢、性別、体格が同じ日本人の標準的な値)よりも低くなっていきます。

 

 

C.正解4

 

1.
クリプトコッカスは、「真菌性肺炎」の原因となる。

 

<クリプトコッカス症>
酵母様真菌の感染を原因とする人獣共通感染症
ヒト、イヌ、ネコなどに感染する。
肺での初感染は、通常、何の症状もないが、免疫が抑制された状態では、肺の病巣から、他の部分に病原体が広がって髄膜炎脳炎症状を示す。
国内における発生状況は不明。

 

<感染経路>
土壌中に広く存在
ネコがクリプトコッカス症になることが知られているが、動物から人への感染は起こりにくい
鳥は病原体のを運ぶことはあっても、鳥自身はクリプトコッカス症にならない。鳥の体温が高いために病原体の増殖が難しいため
しかし、ハトの糞では非常に良く増殖するため、ハトの糞で増殖した病原体を吸い込んで、肺で感染を起こす危険性がある。

 

2.
肺炎球菌は、「定型肺炎」の原因となる。

 

<主な肺炎の種類>
病原菌の違いや発症の仕方により、いくつかに分類される

誤嚥性肺炎 :高齢者や手術後の人に多く見られる肺炎です。食物、胃内容物、口腔内常在菌を誤って飲み込んでしまうことで発症

 

院内肺炎  :入院して2、3日後に発症した肺炎

 

市中肺炎  :通常の社会生活を送っている人に見られる肺炎 細菌性肺炎と非定型肺炎に分類される
・定型肺炎 :主に細菌性微生物が原因となる肺炎で、細菌性肺炎とも言う。 肺炎球菌・黄色ブドウ球菌
・非定型肺炎:主に非細菌性微生物が原因となる肺炎 マイコプラズマクラミジア・レジオネラ等

 

(追記)
間質性肺炎間質性肺炎は肺の細胞に炎症が起こった肺炎ではなく、肺の細胞と細胞の間にある組織に起こった炎症
症状が重症化することで肺が硬くなる肺線維症に移行することもあることが知られている
間質性肺炎は薬剤や放射線、ホコリなどの様々な原因が絡み合って発症する

 

3.
「院内肺炎」は、入院後48時間以降に発症した肺炎である。

 

市中肺炎:通常の社会生活を送っている人に見られる肺炎 細菌性肺炎と非定型肺炎に分類される

 

4.
正答
院内肺炎は、日和見感染であることが多い。

 

院内は消毒されているが、入院患者の口腔内の菌まで消毒しきれない事と、入院患者の免疫力低下により、自身の口腔内にいる菌、健常時には問題にもならないような毒性の低い菌で肺炎を起こしてしまうことがある。
このように毒性の低い菌で感染症を起こすことを日和見感染症という。

 

ちなみに院内肺炎の三大起因菌として知られるのが、黄色ブドウ球菌緑膿菌・肺炎桿菌(クレブシエラ・ニューモニエ)とあるけど、ここまで覚えなくていいよ。

 

5.
誤嚥性肺炎は、「右肺の中葉・下葉」に好発する。

 

右主気管支のほうが左主気管支よりも太くて短く,下降する傾斜が急である。
そのため誤嚥すると異物は右肺に入りやすく、誤嚥性肺炎は右肺下葉に起きやすくなる。

 

 

 

今回は以上。

繰り返しが大事です!
何回繰り返すの?
正答を導きだすための理論を身につけるまでです。

頑張っていきましょう!!