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腎・尿路疾患の成因・病態・診断・治療の概要についての問題 3問【管理栄養士国家試験過去問解説】

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A.腎疾患に関する記述である。誤っているものを1つ。

 

1.急性糸球体腎炎には、A群β溶血性連鎖球菌感染が関与する。
2.ショックは、急性腎不全の原因になる。
3.腎代替療法として、血液透析がある。
4.ネフローゼ症候群の診断に、脂質異常症は必須条件である。
5.糖尿病腎症2期では、微量アルブミン尿を認める。

 


B.腎疾患に関する記述である。正しいものを1つ。

 

1.糖尿病腎症は、ネフローゼ症候群にならない。
2.CKD(慢性腎臓病)の診断基準では、糸球体ろ過量(GFR)が60ml/分/1.73㎡以上である。
3.推算糸球体ろ過量(eGFR)は、血清クレアチニン値を用いて算出する。
4.血液透析は、24時間連続して行なう。
5.死体腎移植を受けた患者には、免疫抑制剤の投与は不要である。

 

 

C.腎・尿路系疾患に関する記述である。正しいものを1つ。

 

1.急激な腎血流量減少は、腎前性急性腎不全の原因になる。
2.糖尿病腎症の第4期は、蛋白尿の出現で判定される。
3.慢性腎不全では、低リン血症がみられる。
4.腎代替療法のうち、最も多いのは、腎移植である。
5.無尿は、透析導入の必須項目である。

 

 

 

 

 

 


続いて回答と解説。

 

 

 

 

 

 

A.正解4

 

1.
急性糸球体腎炎には、A群β溶血性連鎖球菌感染が関与する。

 

<急性糸球体腎炎>
風邪や急性上気道炎を中心とする感染(主にA群β溶連菌)の後、2週間前後で腎臓に炎症が起こる状態。腎臓の中の「糸球体」という毛細血管の塊に病変が生じ、血尿やタンパク尿、むくみ、高血圧などが現れる。症状が急に出て、数時間~数日で悪化するのが特徴。

 

<A群β溶血性連鎖球菌>
溶連菌(溶血性性連鎖球菌)という細菌に感染することによって、かぜ症候群と呼ばれる上気道感染症や皮膚の化膿を引き起こす感染症
主に喉に感染し、咽頭炎扁桃炎、小さく赤い発疹を伴う猩紅熱(しょうこうねつ)などを引き起こす。
溶連菌の中にもA群・B群・C群・G群など複数の種類があり、その中でもA群β溶血性連鎖球菌という細菌に感染する割合が最も高く、溶連菌感染症の約90%以上を占めるともいわれている。
そのため一般的には、「A群溶血性連鎖球菌による感染症=溶連菌感染症」として理解されている。
A群溶血性連鎖球菌咽頭炎溶連菌感染症)は、A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)によって引き起こされる感染症で、小児に多い急性の咽頭炎

 

<参照>
連鎖球菌を羊血液寒天培地で培養すると、増殖した連鎖球菌コロニーの周りに溶血を起こし溶血環が観察されるものがある。
・「β溶血性連鎖球菌」 完全な溶血を起こし透明な溶血環が観察されるもの
・「α溶血性連鎖球菌(緑色レンサ球菌)」 不完全な溶血を起こし暗い緑色の変色でコロニーが囲まれるもの
・「γ溶血性連鎖球菌」 溶血を起こさないもの

 

2.
ショックは、急性腎不全の原因になる。

 

ショックにより急激に腎血流が不足すると、腎機能が維持できずに急性腎不全が引き起こされる。

 

<ショック>
生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果,重要臓器の血流が維持できなくなり,細胞の代謝障害や臓器障害が起こり,生命の危機にいたる急性の症候群。収縮期血圧90mmHg以下の低下を指標とすることが多い。典型的には交感神経系の緊張により,頻脈,顔面蒼白,冷汗などの症状をともなう。

 

循環血液量減少性ショック(hypovolemic shock):出血,脱水,腹膜炎,熱傷など

 

血液分布異常性ショック(distributive shock):アナフィラキシー,脊髄損傷,敗血症など

 

心原性ショック(cardiogenic shock):心筋梗塞,弁膜症,重症不整脈,心筋症,心筋炎など

 

心外閉塞・拘束性ショック(obstructive shock):肺塞栓,心タンポナーデ,緊張性気胸など

 

<急性腎不全(急性腎障害)>
何らかの理由で、腎臓の機能(血液をろ過して老廃物を取り除く働き)が急激に低下し、体の水分のバランスや、血液中の成分のバランスが保てなくなってしまう状態。
急性腎障害の機序は、尿が作られて排出されるまでの経路によって以下の3つに分けられる。

 

「腎前性腎不全」:腎臓に流れてくる血液が減る
「腎性腎不全」 :腎臓そのものに異常が起こる
「腎後性腎不全」:腎臓で作られた尿が流れる道(尿路:腎盂、尿管、膀胱、尿道)が詰まって腎臓がダメージを受ける

 

重篤な合併症として、心不全や高カリウム血症(血液中のカリウム濃度が高くなること)などがある。

 

3.
代替療法として、血液透析がある。

 

<腎代替療法の種類>
透析療法 血液透析(HD)・腹膜透析(PD) 
腎臓移植 生体腎移植(親族・配偶者からの移植)・献腎移植(第三者からの移植)

 

透析:腎臓の代わりに血中に蓄積した老廃物を、半透膜を介して除去する方法

 

4.
正答
ネフローゼ症候群の診断に、脂質異常症は必須条件「ではない」。

 

必須項目:尿蛋白・低アルブミン血症(低たんぱく血症)がみられる
参考所見:浮腫・脂質異常症

 

5.
糖尿病腎症2期では、微量アルブミン尿を認める。

 


B.正解3

 

1.
糖尿病腎症は、ネフローゼ症候群に「なる」。

 

ネフローゼ症候群は、原疾患に関わらず高度な蛋白尿・低たんぱく血症(低アルブミン血症)を認める状態。
一時性ネフローゼ症候群:腎臓の糸球体そのものに原因
二次性ネフローゼ症候群:糖尿病など腎臓以外の疾患が原因

 

2.
CKD(慢性腎臓病)の診断基準では、糸球体ろ過量(GFR)が60ml/分/1.73㎡「未満」である。

 

腎臓に障害がでると濾過量が減少するので、値は健常者よりも小さくなる事をイメージしたらいいよ。

 

3.
正答
推算糸球体ろ過量(eGFR)は、血清クレアチニン値を用いて算出する。

 

推算糸球体ろ過量(eGFR)は血清クレアチニン値と年齢と性別から計算できる。

 

4.
「腹膜」透析は、24時間連続して行なう。

 

血液透析は、通常1回4時間程度、週3回の通院により実施。

 

5.
死体腎移植を受けた患者には、免疫抑制剤の投与は「必要」である。

 

拒絶反応を防ぐためにも、免疫抑制剤の投与が必要。

 


C.正解1

 

1.
正答
急激な腎血流量減少は、腎前性急性腎不全の原因になる。

 

<急性腎不全(急性腎障害)>
何らかの理由で、腎臓の機能(血液をろ過して老廃物を取り除く働き)が急激に低下し、体の水分のバランスや、血液中の成分のバランスが保てなくなってしまう状態。
急性腎障害の機序は、尿が作られて排出されるまでの経路によって以下の3つに分けられる。

「腎前性腎不全」:腎臓に流れてくる血液が減る

 

2.
糖尿病腎症の「第3期」は、蛋白尿の出現で判定される。

 

3.
慢性腎不全では、「高リン血症」がみられる。

 

慢性腎不全では、腎臓におけるリンの排泄障害により高リン血症がみられる。

 

腎機能低下・腎不全状態となると、

尿が出にくくなり尿毒素が溜まる→尿毒症 症状:頭痛・吐き気・食欲不振・意識障害
排出出来ないので水分もたまる→むくみ
電解質調節が出来ない→カリウム・リン値上昇
造血ホルモン(エリスロポエチン)産生低下→貧血
レニン分泌促進→高血圧
ビタミンD活性化されなくなる→骨がもろくなる

 

4.
代替療法のうち、最も多いのは、「透析」である。

 

そんなに都合よくドナーは現れないのが現状・・・。

 

5.
無尿は、透析導入の必須項目「ではない」。

 

透析導入:尿毒症症状・年齢・糖尿病の有無などを考慮し決定される。

 

以下の参考は、細かい部分の透析導入基準です。詳細までは試験に出ないので、興味のある方はみてみると良いと思うよ。

 


<参考>

透析導入適応の基準(厚生省科学研究 1992年)
以下の点数の合計が60点以上が透析導入が必要な状態

(1) 症状・所見

水の貯留(むくみ・胸に水が溜まる)
酸塩基電解質異常(高カリウム血症、酸の貯留)
消化管の症状(吐き気・嘔吐・食欲不振)
心臓の症状(呼吸困難・息切れ・心不全・著明な高血圧)
神経の症状(意識混濁・けいれん・しびれ)
血液の異常(貧血・出血が止まりにくい)
目の症状(目がかすむ)

このうち3つ以上の症状 = 30点、2つの症状 = 20点、1つの症状 = 10点

(2) 腎機能

持続的に血清Cr8mg/dl以上(あるいはクレアチニンリアランス10ml/min以下)=30点
血清Cr 5~8mg/dl(Ccr 10~20ml/min未満)=20点
血清Cr 3~5mg/dl 未満(Ccr 20~30ml/min未満)=10点

(3) 日常生活の障害の程度

起床できない高度 = 30点
著しい制限中等度 = 20点
運動・労働が出来ない軽度 = 10点

10歳以下または65歳以上の高齢者または糖尿病、膠原病動脈硬化疾患など全身性血管合併症の存在する場合は10点を加算する。
小児においては血清Crを用いないでCcrを用いる。

 

 

 

今回は以上。
毎日の繰り返しが大事です!
何回繰り返すの?
正答を導きだすための理論を身につけるまでです。

頑張っていきましょう!!