医療保険制度について 過去問2016年度 第11問
わが国の医療保険制度に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)保険給付の対象となる者を、保険者という。
(2)被用者保険の対象は、自営業者・農業従事者である。
(3)後期高齢者は、国民健康保険に加入する。
(4)医療機関受信の際には、現物給付が原則である。
(5)医療機関受信の際には、患者は医療費の全額を支払う。
先日の投稿に引き続き、社会保険に関する問題を取り上げます。
医療保険は、大きく分けると2つです。
被用者保険と、国民健康保険です。
被用者保険
サラリーマン・労働者が加入する保険。
これも細分化する事ができ、民間企業を対象、共済組合といった公務員・教職員を対象、船員を対象と、区分される。
民間企業対象の保健では、組合(健康保険組合)と協会(全国健康保険協会:別称協会けんぽ)の2種類があります。
組合と協会では、規模により多少の納付額が異なる場合がほとんどですが、それ以外に違いはありません。
規模が大きければ大きいほど、個人が負担する納付額が割引されやすい傾向にあります。
国民健康保険
ほぼ、被用者保険以外の人が対象。
無職者、自営業者等々が対象となります。
ちなみに、生活保護受給者は、対象外となります。
また上記の2つ以外にも、「後期高齢者医療制度」があります。
これは75歳以上、もしくは、状態が芳しくないといった認定を受けた65歳以上の方が対象となります。
国民健康保険の加入年齢の上限は、74歳までとなります。(75歳未満)
医療制度の特徴として3つが挙げられます。
①国民皆保険制
国民は、被用者保険か国民健康保険のどちらかに加入する事が原則
②現物給付が原則
受けるサービスは、「医療行為」という「現物支給」であり、その現物支給にかかる金額の一定割合(原則3割)を自己負担する
③社会保険方式
保健の財源を保険料に求める方式。つまり、保険の運営に必要な資金を、納付される保険料によって行なうシステムという事です。
他の社会保険である、年金事業や雇用保険もこれに該当します。
運営資金は、納付される保険料だけでなく、国の負担金・補助金の交付も含まれている。
ここまでの解説で、この問題は解答出来ると思います。
(1)保険給付の対象となる者を、保険者という。
法律用語(?)なので、少し慣れが必要になると思います。特に就業経験の無い学生の方は、戸惑うかもしれません。
保健というサービスは、提供する側と提供を受ける側によって成り立ちます。
提供する側を「保険者」、提供を受ける側を「被保険者」と表現します。
ですので、この設問でいう給付の対象者、つまり提供を受ける側は被保険者となるので、誤りとなります。
(2)被用者保険の対象は、自営業者・農業従事者である。
医療保険は、大きく分けて2つです。
雇用されている人が加入する「被用者保険」と、それ以外の人が対象となる「国民健康保険」です。
設問で問われている自営業者・農業従事者は国民健康保険の対象となります。
もっと掘り下げると、この原則から外れる人もいるのですが、管理栄養士国家試験の範囲では、そこまで問われる事はないので、気にしなくていいと思います。
よって、この設問は誤りとなります。
後期高齢者は、通常75歳以上、または特定の疾患等をもつような認定を受けた65歳以上の方が対象となります。
後期高齢者医療保険は、国民健康保険とは異なる制度となり、個人負担や運営する財源等が変わってきます。
よって、この設問は誤りとなります。
(4)医療機関受信の際には、現物給付が原則である。
現物給付:医療サービスの費用を直接「保険者」が支払う事。
現金給付:患者が医療機関に直接支払い、患者が費用を保健者に請求する事。
現金給付より現物給付、つまり、患者が直接保健者に請求するよりも、医療サービス提供者が保険者に請求する方が、効率が良いという理由が大きい。
そのため、現物給付が採用されています。
この設問は正答となります。
(5)医療機関受信の際には、患者は医療費の全額を支払う。
医療保険の種類・公費補助により、0~3割を自己負担するのが原則となるため、この設問は誤りとなります。
例外も当然ありますが、管理栄養士国家試験では問われにくいと思います。
ちなみにですが、プロスポーツ選手は個人事業主扱いとなるので、国民健康保険対象者となります。
今回は、ここまで。